ママがおばけになっちゃった!事例報告

ママがおばけになっちゃった!対象年齢引き上げを願う署名に賛同します。

『ママがおばけになっちゃった!』

本書の読み聞かせを受け、

影響のあった当事者保護者の方から話をお聞きし、

当サイト管理人が簡略化してまとめたものです。

Twitter上に散らばっている情報を一か所に置いてみようと思ったのがきっかけです。

 

case1.通っていた保育園で読み聞かせを受ける

case2.書店で平積みの本書を読む

case3.通っていた保育園で読み聞かせを受ける

case4.YouTubeの読み聞かせ動画を見る

case5.母の入院時、家族が購入する

case6.テレビで話題になっている様子をみて

case7.店頭にて本書を読む

case8.父親を亡くし1年ほど経ってキッズコーナーにて

case9.幼稚園の延長保育で読み聞かせを受ける

case10.学校の図書館から本書を借りてくる

case11.図書館で本書を読む

case12.母親の自殺未遂を経験した女性

case13.通っていた幼稚園で本書を目にして

case14.通っていた幼稚園で読み聞かせを受ける

case15.通っていた保育園に本書があり

 

講談社からのお返事を事例の後に掲載しました。

(他の方の確認です)

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case1.年長児

 

ある年の秋ごろ、

通っていた保育園で本書の読み聞かせを受ける。

夜中に「いやだ!死なないで!」

「おいていかないで!ママ!」と叫ぶが、

20分間ほど起こしても目が覚めず、

朝になると叫んだことは覚えていなかった。

 

3日に1度夜泣きがあり、お風呂上りなどに

「死んだらどうなるの?」

「お話できなくなるのいやなの!」など、

急に泣き出すことがあった。

そのうちに生活に変化があったためか、夜泣きは減り、

本人が嫌がるので母親もその話には触れないようにしていた。

 

翌年の秋、母親がSNS上で本書を知ることになり、

注意深く本人に確認したところ、

読み聞かせを受けていたことがわかった。

本人は「絵はいいと思ったけど、怖くて眠れなかった」と話し、

その後は本書の話をすることを嫌がった。

 

その年、弟へのクリスマスプレゼントを

絵本にしようという話になった時、

「あの嫌な絵本、赤ちゃん泣いちゃうよね、だめだよね?」と口にする。

 

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case2.年少児・小学3年児童

 

書店に平積みしてあった本書を読み、

その日の夜から夜泣きが始まった。

母親は対応に追われ、産後の寝不足のような状態になる。

日中は頻繁に母親に死んでしまわないか確認するようになり、

時々あった登校渋りの頻度が増える。

書店に訪れると下の子が「ママを殺す本だ」と指をさすようになったため、

書店への足も遠ざかり、

一日何冊も読むほど本が好きだった上の子も、あまり本を読まなくなる。

 

本書を読んで11ヵ月、登校渋りは続いていて、頻度は減ったものの夜泣きがあると数日間続くこともあり、母親も体調を崩す。

書店の絵本のコーナーにはやっと入れるようになってきた。

 

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case3.4歳

 

通っている保育園で本書の読み聞かせを受け、

その日の夜に、

「ママが死ぬのはこわい!いい子にするからママ死なないで!」と、

3時間ほど泣き続ける。

その後も夜中に泣くことが1週間ほど続き、

日中は両親にくっつき離れず、外出時も車を怖がるようになる。

家にある本は平気でも、

書店に行くのを嫌がるようになり、

本書を読んで1か月、

サンタクロースにはパパとママが絶対死なないようにお願いすると、

両親が色々と話してみても思いが変わらない。

 

母親は本書により夢見る気持ちまで奪われたようだと話す。

 

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case4.5歳女児

 

YouTubeに本書の読み聞かせ動画があり、自分で見始める。

序盤早々「動画止めて!」と言い、

母親は話題になった絵本だしもう少し先を見てみても?…と思ったものの

耳を塞ぎながら半泣きで「止めて止めて!」という娘の様子に動画を止めた。

 

直後は他の動画を見て気を紛らわしていたものの、

「ママも死ぬの?」「いやや、死なんといて」と泣き出し、

「いつかは死んでしまうけど、そんなに早くは死なないよ」

という母親の言葉を聞いても、不安がぬぐえない様子で、

その日から短い時間でも一人になることを嫌がるようになる。

お風呂で1人で待つこともできない、1人で1階に降りることもできず、

当時1歳の下の子がいたため、毎日の何気ない家事育児が滞ることも多かった。

 

母親から片時も離れず、

「ママもいつか死ぬ?私もいつか死ぬ?死んだらどうなるの?」と聞き続け、

何をするにも不安な様子だった。

 

母親は「母の死」について考えるには早すぎる年齢だったと思い、

なんていうことをしてくれるのだと思う反面、

この子はどうなってしまうのだろうと、不安を感じる日が1週間程度続いた。

小学生になった今でも極端にこの類の話を嫌がる。

 

当時、子どもが途中で見るのをやめた動画を後で見返した母親は、

なぜこれが話題になったのか理解できない、何も得るものがなかったと思い、

書店で同作者の作品を見せることを避けていたが、

小学生になった今では、自分で借りてきた同作者の他作品を

「こんなママいないよ~」と

笑いながら見ることができるようになっているという。

 

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case5.

(case1-4までよりも少し大きなお子さんです

はっきりした年齢は伺っていません)

 

母親の入院時、

家族が本書を含む数冊の絵本を購入。

絵本の内容にショックを受けた上のお子さんは

情緒不安定になり、

これまで大切に読んできた同作者の過去の作品

「はなちゃんシリーズ」を手放すまでに至る。

 

母親の言葉

「愛情の花がひらくはなちゃんと、

楽しげに悲痛な愛情を注ぐおばけのママさん…。

あまりにも愛情の向かう方向が違いずぎていて、

作者の思いもわからず、辛かったようです。

あの作品が非常に深く不快な思いを、

子どもに刻み付けてしまいました。」

 

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case6.小学校低学年児

 

本書がテレビで話題になっているのを見て、母親が購入し読み聞かせる。

いつからか子どもは一人で寝るのを嫌がり、

母親が死んでしまうかもしれない怖さに、夜になると泣き出すようになった。

他にも不安定な様子が見受けられるようになり、

絵本を読み聞かせた時期と、不安定な様子が始まる時期が重なることに気がついた。

1年が経った今でも、頻度は減ったものの夜中に泣き出すことがある。

 

母親は店頭で本書を購入の際に、よく読んだわけではなかったと話す。

「感動する絵本」というメディアのキャッチコピーをよく考えず、

そのまま子どもに与えてしまったことを深く悔いている。

 

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case7.小学2年生女児

 

小学2年生の冬、本書が発行されて半年頃のこと。

ローカル放送の情報番組で、

県内の書店で売れ行きがいい絵本として本書が特集されていた。

番組の影響もあってか、書店では小さい子の目につくようなPOPで飾り付けしてあり、

子どもなら飛びついて手に取るような状態。

このcase7の女児も飛びついて読み始めた。

 

しばらくすると、しくしくと泣いていているので、

何があったのか?とたずねたら、

「お母さんも死んじゃうの?」と聞いてくる。

最初は訳がわからず、何のこと?と何度も聞いたが、

だんだん大泣きになってしまい、ひとまずすぐ車に戻り、落ち着いて話を聞いたら

「絵本が怖かった」「お母さんが死んでしまった」

「もう読みたくない」と話し、帰宅してからもその日は母親のそばを離れず、

次の日の朝も学校に行きたくないと言い出した。

 

なだめつつ何とか登校させ、下校してからは落ち着いた様子ではあったが、

それまで帰宅するといつも絵本を読んでいたのが、その日以来一切絵本を読まなくなり、

買って欲しいとも言わなくなった。

母親は本書を読んだことがきっかけだと認識している。

 

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case8.4歳男児

 

男児は3才の時に父親を亡くしており、

パパが死んでしまったこと、

もう会えないことを何となく理解して、

ようやく落ち着いてきた頃のこと。

初めて行った小児科に隣接する、薬局のキッズスペースで本書と出会う。

 

母親が書類の記入をしている間、

キッズスペースで薬局のスタッフが読み聞かせをしていた。

(ほかにも数名の子どもが一緒にきいている)

その日から急に母親にべったりになり、

当初は風邪をひいているせいかと思っていたが、

自室で遊ぶこともなくなり、一日中母親と過ごしたがるようになる。

 

様子がおかしいと思った母親は、

ネットで調べて、この本が原因かもしれないと気づき、

後日、薬局に出向きキッズスペースに本書があるのを確認する。

 

父親の話はしなくなっていたのに、父親の居場所を聞いてくるようになり、

首を振るチック症状が出て小児心療内科にかかる。

 

『一度自分の中で子どもなりに納得した死』の形が

崩れてしまい混乱している様子で、

夜泣きがあったり、

「お母さんは生きているよね?」

「パパはどこにいるの?」

「死んでも会いにこれるの?」

と、繰り返し問いかけてくる状態に母親も泣いてしまうような日が続く。

保育園にもチック症状のことを伝え、よく見てもらえるようにと頼んである。

 

それから半年、一人で寝ることはできないが、

軽々しく「死ぬ!」と言ったり

「お母さんは死なないでよね」と言うことは少なくなってきている。

医師の判断で不安定な時には通院をしている。

 

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case9.5歳年長女児

 

母子家庭で二世帯住宅の形で祖父母と同居中。

他界した曾祖母を「死んでしまって、神様のなったのよ。」

という祖母の話を聞いている。

 

幼稚園の延長保育中に本書の読み聞かせを受ける。

母親がお迎えに行った途端、

「ママ、おばけにならないでね」

「神様にならないでね」とすがりついてきた。

 

帰り道も「神様にならないでね(死なないでね)」と何度も念押しする。

話をするうちに、読み聞かせでそういう内容の本を読んで貰ったことが判明。

「ママはおばけにならないし、もしそんなことがあっても、

娘ちゃんのためにすぐに地獄から舞い戻ってきて

今よりパワーアップするから安心して!」と話して一端は安堵した様子だった。

 

しかしその夜「読んでもらった絵本が怖くて眠れない」と、なかなか寝付くことができず。

「楽しいお話して」というので楽しいお話や歌を延々繰り返し、寝付いたのは夜中の12時を回っていた。

そんな日が何日も続き、寝不足による体調不良で数日幼稚園を休む。

(一週間ほどで、祖父母の部屋にお泊まりごっこをしたのをきっかけにひとまずおさまっている。)

 

読み聞かせがあった翌日、担任に問い合わせて該当の絵本が「ママがおばけになっちゃった」であることを確認。

『鬼太郎』や『地獄先生ぬ~べ~』『キョンシー』など、

怖い話が好きな娘が怖がって怖がって眠れない…。

様子が尋常ではないことを伝えて、職員の間で情報共有してもらった。

本人が納得していた死生観が破壊されたことに加え、

母子家庭で父不在の娘にとって、本書は母がいなくなり一人で放り出される内容であるため、

その寄辺のなさに強いショックをうけたことと、

面白可笑しいとされている母親に

鼻くそを食べさせる描写なども、

娘からすると「お母さんがかわいそう」という認識。

いつも手を差しのべてくれるはずの祖母の存在も

作中では「庇護してはくれない存在」であり、

ママがいないときはおばあちゃんが助けてくれると信じきっていた娘にとっては、

「ママがいなくなったら誰も助けてくれないかもしれない」と

恐怖を感じる要因になったのではないか。

そのため、祖父母の部屋でお泊まりごっこをして一晩一緒に眠り、

自分は祖父母にもちゃんと助けてもらえることを再確認してから

不安や恐怖が和らいだものと、母親は考えている。

 

母親は本書の内容を知らない段階で、

女児に「ママ死んだらパンツは残しておいてね。

ママのパンツをはいてママの存在を感じるから」

と言われたことに大変なショックを受けたという。

 

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case10.7歳小学1年生男児

 

小学校の図書室で表紙を見て、本書を借りてくる。

 

寝る前に1人で読んでいたが「お母さん読んで」と持ってくる。

読んでいる間は無表情で、

絵本の中の鼻くそやパンツにも反応せず。

読み終えると

「この本怖い!もう借りてこない!」

と言いランドセルにしまう。

いつもなら1週間借りているところを、翌日に返すと言い、

いつも借りる作者の本にすれば良かったと話す。

この日はそのまま就寝。

 

翌朝は起きた時から抱っこ、朝ごはんの時も抱っこと、

母親は常に抱っをせがまれる。

学校の準備をし玄関まで行くも、急に泣き出し、

「お母さんがおばけになっちゃったらヤダ〜」と言う。

結局教室まで送り届ける事になり、

帰宅した時にもお母さんがいないと嫌だと話す。

 

母親はこの日、どうにか仕事をやりくりし、

子どもより先に帰宅。

翌日からも早目に帰宅できるよう、仕事を調節する事になる。

帰宅してからも男児は母親にベッタリで、

ふと気がつくと抱っこをせがみ、

「お母さんおばけになっちゃう〜」と泣き出す。

 

この状況が数日続くが次第に落ち着き、

登校班でお友達と登校できるようになったものの、

本書を読んでから1週間、今だに急に泣き出し抱きついて

「お母さんおばけになっちゃう〜?」と言う。

特に夜寝る前に思い出して不安になるのか、

ほぼ毎晩、泣いて母親に抱きつきながら眠っている。

 

図書室では、低学年児の手の届かない所に配置するなど、

なんらかの配慮をしてほしいと母親は思っている。

 

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case11.5歳男児

 

図書館からの帰り道、

「お母さんが死んだらどうしよう。」と車の中で突然泣き出した。

どうして?と聞くと「お母さんが死んでおばけになる本を読んだ。」とのこと。 それから一週間近く経っても、男児は保育園に行く以外、

母親のそばを離れなくなった。

一人で寝るようになってから随分経ったのに抱っこをせがんで眠るようになる。

 

数年前、立て続けに葬儀があった。

身近に『死』感じ、幼い頭でいっぱい考え、

「親たちもいつか死ぬ」という気配に怯えて、怖いと何度も泣いた。

親子はたくさん話をし、毎晩楽しい優しい絵本を読んで、

やがては心穏やかにして眠れるようになっていた。

絵本は男児にとって安定剤だった。

本書が男児の目に留まったのはそんな折だった。

 

母の死を茶化すような主人公にも困惑していたという。

主人公はお母さんが死んで悲しくないの?

ふざけるのは悪いことじゃないの?

(死を取り巻く表現が、自身が経験してきたものとあまりにもかけ離れているのは事実だろうと思う。管理者感)

 

母親は、

死への不安や恐怖は当たり前の反応ですから仕方ないこととしても、

こんな形で子どもを不安感で染めることがどれだけ酷い仕打ちか。

親子のありがたみを母の死というヘビーなテーマで軽率に喚起させるこの構成はなんなのか。

安っぽい感動を売り物にするためだけに母親を殺したのか。

誰のための絵本なのか理解に苦しむ。としている。

 

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case12.30代女性 二児の母

 

女性は10歳当時、母親の自殺未遂を経験している。

 

母親はいつでもいなくなってしまうと体感し、

毎日のように母親が死ぬ夢を見たり、

夜中に目覚め母親が呼吸をしていることを確認する日々。

母親に甘えることが怖くなり、

学校でもいつ呼び出されるかと、

校内放送のチャイムに怯えるようになる。

そんな日々が2年ほど続いたのち、

両親は離婚する。

 

18歳の頃、母親の入院をきっかけに当時のことがフラッシュバック

ストレスから心身症になり治療を受ける。

 

第1子出産後、読み聞かせボランティアで

ママ向け絵本タイムに読む本を探していて、

書店で平積みされた本書を手に取る。

途中で読むのをやめたくなったが、

最後まで読めば救いがあると思い読了するも、

グリーフケアがなく愕然とする。

死を茶化した表現にも激しい不快感を覚え、

母の死に怯えた日々を思いだし暗い気持ちになった。

本書を思い出さないようにするため、

図書館や書店で作者の本を避けて過ごす。

 

第2子出産後、

ADHDとうつの診断が出て治療を始める。

 

Instagramで家庭で読み聞かせた絵本の記録を投稿すると、

のぶみ氏からいいねがつくようになる。

氏の顔のアイコンを見るたびに、

本書を読んだ時の記憶、

母の死におびえた日々の記憶が甦る。

 

あの本は子どもを傷つける絵本です。

いいねも控えてほしいとメッセージすると、

「誰も傷つけてない」と返信があり、

氏の他の絵本も読むように薦められる。

 

自分のこれまでの経験を伝え、

少なくとも私は傷ついた旨を説明すると、

返信なくブロックされ、

悲しみと怒りが頭から離れなくなってしまった。

 

通院先で氏とのやり取りを話すと泣いてしまい、

状態を安定させるためにうつ治療薬を増量される。

絵本を読んだことによる気分障害の診断書を貰う。

未だに本書は怖くて手に取ることができない。

 

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case13.年少女児

 

ある日突然夜中に泣き叫ぶようになり、

当時は特別思い当たる節がなく、

原因がわからないまま寝不足の日が続く。

 

書店を訪れた際、幼稚園で本書を読んだことを知る。

以前からTwitterなどでの注意喚起を目にしていたことを思い出し、

これが原因だったかもしれないという思いに至る。

女児には見ないようにといったものの、

幼稚園でたびたび目にすることがあるようで、

その度に夜泣きのようなことが起こっていた。

 

死んでしまったらどうなるか、

ママのおじいちゃんおばあちゃん、

そのまたおじいちゃんおばあちゃんも天国にいて、

たまに元気にしているか見に来るんだよ、

と、話をしても納得しきれない様子でいた。

 

それがある日、

幼稚園から帰ってきてとても晴れ晴れとスッキリした様子で、

下の子に「ママが死んだら一緒に天国に行こうね!」

と話しかけているのを目にする。

「動悸がして、もう何とも言えない気持ちになりました。

死ぬことがどんなことかわからなくても、

刷り込みのようなものもあると思うんです。

幼いころから聞いていたらもしもの時に体が動くと思い、

常々大きな地震が来たら津波が来ると緊急事態に備えて教えていました。

それと同じように、本当にそう思って死んでしまうかもしれない…」

と、母親も恐怖感を感じていた。

 

絵本を読んだことによると思われる夜間の泣き叫びがあった当時、

この女児にとっては死んでしまった後の世界よりも、

一人で幼稚園に行かなければいけない、

ご飯が作れない、お洗濯ができない、

車が運転できないから

おじいちゃんのおうちにも行けないという、

生活に即した恐怖感があったように母親は感じている。

 

もしママが死んでしまっても、

大人が絶対助けてくれるから何も心配しなくていいし、

おじいちゃんおばあちゃん、おばさんも助けてくれると話をした。

死後の世界についても、

ヨシタケシンスケ氏の「このあとどうしちゃおう」を読んだことで、

怖いところではなく自由に想像していいのだと思えている様子だった。

 

絵本が怖いなどの言葉は出ていない中で

母の死後を不安に思う様子が続いていたが、

現在は夜泣きもせず落ち着いていて、

書店で本書を見かけると絵がかわいいと読みたがる。

 

夜泣きの原因がすぐにわからず、

何かの病気かもしれないと不安になったり、

愛情不足かもしれないと自分を責める気持ちにもなった。

そんな中で毎日死について聞かれることで更に余裕を失い、

親子関係が悪くなったように感じ、

いい影響があったとは思えないと母親は話す。

友人と本書の話題になっても

「うちは大丈夫だった」「泣けた」というような流れになり、

幼稚園の職員に作者のファンがいるのかもしれないと思うと相談もできずにいた。

Twitterでの注意喚起のおかげで、

自分の愛情不足ではない、

うちの子だけではないんだと安心することができた。

 

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case14.年少女児

 

年少の夏、通っていた幼稚園で本書の読み聞かせを受けた。

その日から夜泣きなどの不安症状が年長の終わりまで続くことになる。

 

ある日の夜、

「おかあさん、もうすぐ死んじゃうから会えなくなるね。嫌だよ。」

と言いながら泣き出し、

女児のその言葉は自分に言い聞かせるように何度も繰り返された。

いったい何があったのかと翌日幼稚園に問い合わせたところ、

本書の読み聞かせがあったことがわかる。

(その日の絵本は子どもたちの選んだ本から多数決で決められた)

 

当初2週間ほどは毎日のように夜泣きがあり、

その後回数は減るものの年長の終わり頃まで約2年半に渡って断続的に夜泣きが続くことになる。

寝るときは普段と変わらない様子でも眠っている途中でうなされる。

不安症状は母親と離れる際に顕著に表れ、

習い事で母親と別れる時や幼稚園の登園時にひっくり返って泣き叫ぶようになった。

 

週に一回通っていた習い事。

それ自体は楽しんで張り切っていたものの、母親と離れる時には毎回激しく泣いた。

登園時に激しく泣く頻度はしだい減っていったが、毎日シクシク泣きながら幼稚園バスに乗っていた。

 

当時、同じ園に通う他の保護者と特別親しくしていなかった母親は、

このことについて周囲から同様の話を聞くことはなく、担任からも他にそういった声はないと言われている。

「もともと娘は甘えん坊で泣き虫なんです」と話す母親は、

こんな反応は自分の子が特別なのだと思っていた。

 

母親は、他の子よりも繊細な子なのだと捉えて満足するまで甘えさせてあげることを意識し、

安心できる言葉を選んできた。

こうなったのは私の育て方のせい?自分自身がダメな人間?そう思って自信を失いそうになることもあったが、我が子の笑顔に何とか支えられてきたという。

 

他にも同じように分離不安症状に苦しんだお子さんがいることを知ったのは、「あたしおかあさんだから」の歌詞が話題になり、作者についても様々な言及がなされるようになった頃。

Twitterを見て情報を得るようになったことで、我が子だけではなかった、自分の感性は間違っていなかったと思え、ようやくほっとすることができた。

 

 

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case15.年少男児


当時男児は4才。
保育園から帰宅し「ママはおばけになっちゃうの?」と不安げな顔で母親に問いかけてきた。
「ならないよ??ママ元気だもん大丈夫だよ!どうしたの…?」と抱きしめるも、
「ママがね、交通事故にあっちゃうかと思って…」と普段泣かない子が涙する。
どうしたのだろうと思いつつ子どもが落ち着くまで抱きしめた。


その日の夜。
すっかり夜泣きなどしなくなっていた男児が、夜中に火が付いたように泣きながら叫び始めた。
父親とともに「どうしたの?大丈夫?」と何度も声をかけ抱きしめて、
少し落ち着いた様子を見せたと思ったのもつかの間、
再び「こわいご本いやだ」「おばけにならないで」「ママいなくならないで」と泣き出した。


母親は以前テレビで特集されていた1冊の絵本を、この時初めて思い出した。


タイトルの時点で嫌悪感を持った。縁起でもない…幼児向けに?と、書店で見かけた時にはチラッと目を通して「これが売れるなんて信じられない…」と思っていた『ママがおばけになっちゃった!』


もしかしてあの絵本を読んだのでは…。


翌日保育園に送り、園内を覗いた時「今週の絵本」のコーナーにこの絵本が置いてあるのを見つけた。
これだ…これを読んだんだ…そう思ったものの、母親はこのことを保育者に伝えるべきがとても悩んだ。
ネット上で飛び交う「考えすぎ」「過保護」「無菌室で子育てしたいの?」という言葉、
また作者に心酔するファンが園内にいたら…?様々な考えが浮かび、結局何も言えないままになってしまった。


子どもの夜泣きは毎日ではなく、時々思い出したように起こる。回数として多いとは言えないのではないかと感じ、相談するタイミングも掴めなかった。


6歳になった今でも「ママ…いなくならないで」と夜中にシクシク泣くことがある。
「怖い本を思い出したの?」と尋ねると「うん、交通事故の」とこたえが返ってくる。
その都度「大丈夫だよ、いやな絵本だね、ママ絶対いなくならないしずっと一緒だよ。」と声をかけると、
「よかった…」と母親の手をぎゅっと握って目を閉じる。


そんなことが時折続いていた中、保育園の参観日で、「ママがおばけになっちゃった!」が年中年長児に向けて読み聞かせられた。


未だにこれを選ぶのかと、信じられない気持ちになりながらも、
保育参観の途中では何をすることもできない。
最後には「みんなもママがいなくなったら嫌だよね、いい子にしましょうね」と締めくくられていて、
母親は何とも言えない気持ちになった。


その日子どもに「交通事故の絵本だったね…」と言うと、
「あれきらーい」と言いながら強いショックを受けている様子ではなかった。
母親は、慣れや成長があるのかと受け止めつつ、やはりこの本は3才からは早すぎるという思いを改めて感じている。

       

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